おすすめのキーワード
“スタイルのある人”とは?
様々な分野で活躍する人々の“スタイル”を紐解く。
ライフワーク、そしてファッションという2つの視点から
その人らしさをつくるエッセンスについて、たずねていきます。
今回は、建築チームADXの代表を務める安齋 好太郎さんにお話を伺いました。
まずはこれまでの経緯を教えてください。
祖父、父の工務店を継ぐ形で、安斎建設工業という会社の3代目として建築業をはじめました。
もっとカジュアルな建築をつくっていきたいという想いがあり、23歳の時に社名をライフスタイル工房に変えたんです。それなりに事業を拡大していく中で、“何のために建築するのか”という目的を明確にしたいと思い、5年前に株式会社ADXを立ち上げ、1つのフィロソフィーをつくったんです。
それが「森と生きる」という考え方でした。
「森と生きる」とは、具体的にどんな考え方ですか?
僕らが扱うのは木造の建築なので、森がないとつくれません。だから事業を行えば行うほど、森が豊かになる仕組みをつくれないかと考えたんです。
例えば、建築というよりもプロダクトに近い仕組みをつくりました。現地での工事期間が長くなればCO2が出て、環境に負荷がかかってしまう。もうひとつ、森は過酷な環境なので、働く人たちの負担もあります。
そこで工場で7割くらいつくってそれをトラックで運び、現地での施工は最低限に抑えるという仕組みをつくりました。
現場で働く時間を短くすることで、自然の中に安全に建築をつくることが
できるんです。
実際にどんな建築をつくっていますか?
指標になったのは、60年ほど前に祖父が福島の安達太良山につくった「くろかね小屋」という山小屋です。せっかくつくっても空き家になったり取り壊される建築はヘルシーじゃないですよね。「くろかね小屋」は人に愛されながら、長い間自然と共存しています。そのDNAを受け継いで、祖父のように“残る建築”をつくりたいと思いました。
その中で取り掛かったのが、SANUという会社と一緒につくった会員制のシェア型セカンドハウスで、僕らにとっても挑戦的なことでした。今、全国の色々な場所にSANUのセカンドハウスは100棟くらいあるのですが、大きな特徴として、全部が同じつくりなんです。違うのは窓を開けた時の自然の風景だけ。ホテルではなくセカンドハウスなので、帰ってきて“ただいま”と
言える場所にしたかったんです。あくまでもそこにある美しい自然がメイン。だから僕らの建築は、安心して滞在できる場所をつくるというのが目的です。
ラベンハムの服も、ちゃんと当たり前にあたたかくて、安心して日常を過ごせるもの、いわば空気のような存在ですよね。それと一緒です。このジレのボタンを目を瞑っていても開け閉めできるように、目を瞑っていても電気のスイッチが押せるような、愛着のある場所にしたかったんです。
SANU 2nd Home のSANU CABIN BEEはとてもユニークな形をしていますね。
SANU CABIN BEEは「ハニカム構造」と呼ばれる蜂の巣の構造を模していて、強度が強く、
結構な積雪でも耐えられるんです。誰が教えたわけでもないのに、強度の高い六角形の巣をつくる蜂ってすごいですよね。デザインのヒントって基本的に自然の中なんですよ。その方が美しいさと思う瞬間がたくさんあります。
このキルティングの柄にも、きっと何か意味があるんですよね?
(ラベンハムスタッフ)
そうですね。例えばダイヤのキルティングの縫い目がクロスしていているのは、ほつれてしまってもそこでほつれが止まるよう、わざと重なるように縫っています。
(安齋さん)
そういうのめちゃくちゃ大好きです。ものづくりの人間として惹かれるポイントです。今ふと思い出したのは、鹿がよく食べる葉っぱがあるんですが、葉脈が重なっていて、ある程度食べられても光合成できる仕組みになっているんです。それに少し似ているなと。
このジレの裾も、90度だったらもっとつくるのが楽かもしれないのに、あえてカーブをつくっているのはどうしてだろうとか、そんなことを考えるのが好きなんです。
あらゆるものの構造に目を向ける視点は、幼い頃からお持ちだったのですか?
子供の頃からです。子供の頃は発明家になりたくて、いろんなところに電話や手紙でアイデアを送っていました。
例えば炭酸飲料を飲んで翌日に残しておくと炭酸が抜けていますよね。空気の部分が多いと炭酸が抜けるのだとしたら、ペットボトルがパキパキと小さくなって空気の堆積を作らない仕組みにしたらいいじゃないか、とか。そういうのをいつも考えて、色々な会社にアイデアを送っていました。
疑問やアイデアを頭の中だけで終わらせない姿勢が、“森と生きる”という理念を具現化することにつながっているのですね。
それが正解かはわからないですが、何においても一方向で見ない方がいいと思っています。地球上にはたくさんの動物がいて、彼ら側からの視点があって、それを考えることで初めて多様性が生まれてくる。地球全体はネットワークで繋がっているので、一方向の目で見るよりも色々な目で見ることで、知識や知恵も生まれるし、何より楽しいんじゃないかなと思います。
毎日の洋服選びや習慣について教えてください。
洋服は毎日着られるというのがやっぱり大事です。このジレを選んだのも、色々な気候に対応できて、何にでも合うだから。面倒臭がり屋なので、同じ洋服、靴が1週間分あって、基本的に毎日同じ服装なんです。
その代わりに毎日変えているものがあって、それは“道”です。
例えばオフィスまでの道のりも、毎日ルートを変えています。ただ最短距離で移動する、という作業ではなく、移動の時間さえ楽しんだ方が人生豊かになる。色々な気付きがあるじゃないですか。自然もそうですが、自分の力で変えられないものに興味があるんです。
そこに様々なヒントが隠れていたりして、それが楽しいんです。
安齋さんにとって、洋服は色々なものに目を向けるために、いつもの自分でいるための機能性が備わっていることが重要なのですね。
そうだと思います。毎日いろんなところに冒険しに行く、という気持ちがあるので、冒険に必要な温度調節や着心地などの機能性があることが大事です。
ラベンハムも、軽くて動きやすいし、あたたかい。先ほどキルティングについてのお話もありましたが、ちゃんと語れるものというところが僕にとって重要なんです。どこでつくられて、作り手が誰なのかがちゃんとわかるような、そういった洋服に惹かれます。
ラベンハムについて、他にはどんなイメージを持っていますか?
すごく長持ちするブランドですよね。先ほど“残る建築”をつくりたいと言いましたが、洋服も同じで、5年後にゴミになってしまうものには惹かれません。ちゃんと長く着られることって当たり前のようですごく重要で、ファストファッションが大量生産、大量消費される中、長い時間一緒に過ごしてその服の中に思い出を詰めていけるかというのは、同じ“着る”ということでも全然違うことだと思うんです。すごくシンプルなことだけど、長く着られるって嬉しいこと。ずっと一緒にいられる安心感を覚えます。
建築も一緒で、長い時間をかけて人の想いが詰まった建築って、やっぱり愛着がわくし安心する。そういったところでシンパシーを感じています。
(ラベンハムスタッフ)
ラベンハムにも「Being Better(ビーイング ベター)」という考え方があり、「森と生きる」という考え方に共感しています。ラベンハムの製品は今もすべてイギリスの牧草地帯にある工場でつくられていて、
目の見える範囲内で、クオリティを重視したものづくりをしてきました。地球環境に考慮した範囲内で、自分たちのサイズに合ったことをやっていこうという考え方を持っています。
例えば、すべてをサステイナブルに変えるためにかえって破棄するものが出てしまうなら、まずは今あるものを使い切るところから始めよう、と取り組んでいます。そしてまずは長く使ってもらえることが一番いい、というところから、リペアサービスにも注力しています。
(安齋さん)
それこそがWIN-WINの世界だと思います。“環境に優しい”と言った瞬間、人間が置いていかれちゃうケースが多くて。でも僕らも生物のひとつじゃないですか。地球全体をよくしようとしている時に、人間を排他的にするのはちょっと矛盾します。人間を悪者にしちゃうのは寂しいし、それでは新しい社会はつくれない。
今あるものをどうやって大切にしていくかを、忘れないでほしいですね。
安齋 好太郎
1977年生まれ、福島県二本松市出身。祖父の代から続く安齋建設工業の3代目として事業を引き継ぎながら、「森と生きる」という新たなフィロソフィーを掲げて2006年に株式会社ADXを創業。建築を軸に、様々な視点から自然と共存する仕組みを考案し、実践している。第1回JAPAN WOOD DESIGN AWARD 2015ソーシャルデザイン部門入賞、ウッドデザイン賞2022最終優秀賞、ウッドシティTOKYOモデル建築賞最優秀賞など、受賞歴多数。
INSTAGRAM: ADX.co.,Itd
Writer : Moe Shibata
Photographer :Takeshi Sasaki
Editor: Arisa Ogura